2019年8月12日付のニュースで湘南ベルマーレの実績ある曹貴裁(チョウ・キジェ)監督がコンプライアンスの問題で退任濃厚であるという報道が流れました。
湘南ベルマーレの曹貴裁監督(50)が電撃退任することが11日、濃厚になった。コーチングスタッフや選手へのコンプライアンス(社会的規範やモラルの遵守)の問題が浮上。今後、Jリーグの調査も入るという。(日刊スポーツ)
最近よく耳にする「コンプライアンス」はどういう意味なのでしょうか?
今回はJリーグのコンプライアンスとは何なのか?わかりやすく解説すると共に、過去の事例についてご紹介いたします。
Jリーグのコンプライアンスとは?わかりやすく解説!
コンプライアンスとは簡単に言えば「社会的・組織的ルールを守りながら、道徳的に生活をすること」と言えるでしょう。
なお一般的にはコンプライアンスとは
・法規範
・社会規範
・内部規範
から成り立つといわれています。
Jリーグは日本JFAの傘下組織
Jリーグは日本サッカーのプロリーグですが、JFA=日本サッカー協会の傘下組織となります。
このJFA(日本サッカー協会)は「コンプライアンス・ブック(全44ページ)」なるものを発表しています。
このコンプライアンスブックは傘下組織すべてに精通するように、組織雲煙の軸となる考え方が詰まっているものになります。
よってJリーグもリーグやチーム運営する上で、JFAのコンプライアンスブックの遵守が求められます。
一般企業で言えば企業ルールや企業方針といったところですね。
JFAのコンプライアンスブックとは?
このJFA(日本サッカー協会)が公表している「コンプライアンス・ブック」は大きく3つのカテゴリーから構成されています。
1、倫理・コンプライアンス方針
コンプライアンスブックとはなんなのか?という位置付けを定めています。
「倫理・コンプライアンス方針」は、「サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する」という公益財団法人日本サッカー協会(JFA)の理念を実現する上で欠くことができない倫理・コンプライアンス対応の決意表明です。
(JFAコンプライアンスブックより)
2、サッカー行動規範
サッカー行動規範は一般企業でいえば企業方針のようなもので、考え方や心がけ、大切にしていることといえます。
JFAはスポーツ・インテグリディ※1を守るためにもこの行動規範を定めています。
●JFAが定めるサッカー行動規範
1、常に「リスペクト」の精神をもって、誠実な姿勢で公正を貫くことを心がけ、公平な行動
を行い、サッカーの普及及び強化活動を行います。
2、倫理・コンプライアンスを「世界各国の法規範や内部規範の遵守だけではなく、社会
通念や道徳など、社会から求められるより高いレベルの倫理観に従って行動し、誠実か
つ公平・公正な行動を実践すること」と捉え、一人ひとりが実践します。
3、この倫理・コンプライアンスの実践、遵守を推進するために、組織風土の醸成や組織体
制を構築し、組織一体となって倫理・コンプライアンス重視の組織基盤の整備を行い
ます。
※1 「インテグリティ(Integrity)」とは「高潔さ・品位完全な状態」を意味する言葉。
スポーツにおける「インテグリティ」とは、「スポーツが様々な脅威により欠けることなく、価値ある高潔な状態」を指します。
3、倫理規範
JFAコンプライアンスブックの中の倫理規範の項目では、するべきこと・やってはいけないことを具体的に明記してあります。
以下のことに違反をした場合には、JFAのコンプライアンスオフィサーや調査団が調査をした上で罰則など処分を課すこととなります。
1、法令遵守
2、人権尊重と差別の禁止
3、適正な経理処理
4、公正な取引関係の維持
5、情報の厳正な管理
6、情報の開示と説明責任
7、自然環境の保全
8、地域社会への貢献
9、試合結果の不正操作の禁止
10、ドーピングの禁止
11、違法賭博の禁止
12、ハラスメントの禁止
13、違法薬物や問題飲酒行動等の禁止
14、不正な利得の収受行為の禁止
15、私的利益追求の禁止
16、反社会的勢力との断絶
Jリーグのコンプライアンスについて過去の事例紹介
Jリーグが1993年に開幕してから約20年が経とうとしている中で、これまでコンプライアンスに抵触・違反により騒動になったことが何度かありますのでいくつか事例をご紹介します。
1、2010年大宮アルディージャの入場者数水増し発表
2010年のホームゲームの入場者数を水増しして防いに発表したことが発覚し、問題になりました。
その後2011年に大宮アルディージャはチーム・運営会社のコンプライアンスを強化するため「特別倫理委員会」を設置。
特別倫理委委員会には大宮アルディージャの社長・役員関係者以外に社外メンバーとして弁護士も参加しています。
選手やスタッフに対してコンプライアンスの撤退を目的とした研修も定期的に開催することで意識改革・教育をしています。
この事例で言えば、コンプライアンス・ブックの倫理規範の中の
5、情報の厳正な管理
6、情報の開示と説明責任
に当たるでしょう。
2、2018年横浜マリノスの元経理担当社員による不正
2012年〜2018年に渡り経理担当の元社員が総額3300万円分を着服していたことが発覚。
Jリーグと運営会社は弁護士含む調査チームを組み、本人も認めたことから懲戒解雇・全額弁済という結論になりました。
その後チームへの制裁金として300万円の支払いと社長の減俸3ヶ月。
2018年11月20日に記者会見を開き説明責任を果たしました。
これはコンプライアンス・ブックの倫理規範の中の
3、適正な経理処理
6、情報の開示と説明責任
15、私的利益追求の禁止
に当たるでしょう。
湘南ベルマーレ・曹貴裁(チョウ・キジェ)監督のコンプライアンス問題とは?
2019年8月12日付の報道で湘南ベルマーレの監督・曹貴裁(チョウ・キジェ)さんがコンプライアンス違反により退任する可能性があると発表されました。
湘南を指揮して8年目、曹監督が退任することになりそうだ。複数の関係者によると、昨季から曹監督の指導を受けたコーチングスタッフや選手がメンタル面の支障をきたす事案が続いていた。情報はJリーグにも入っており、調査が入る予定になっている。(日刊スポーツ)
その後湘南ベルマーレ側もコメントを発表。
「月12日(月)発行のスポーツ報知と日刊スポーツにおきまして、湘南ベルマーレの監督である曺貴裁がパワーハラスメント行為を行った疑惑があるという内容の記事が掲載されております」
「クラブとしましては、記事内容の詳細を確認し、Jリーグと協議の上で、報道された内容に関する事実関係の調査を速やかに行ってまいります」
「応援して下さるサポーターの皆さま、ご支援いただいている企業の皆さまに、多大なるご心配をおかけすることにつきましては、大変申し訳なく、心よりお詫び申し上げます」(ニコニコニュース)
複数の報道によると、曹貴裁(チョウ・キジェ)監督のコンプライアンス違反と考えられる内容は以下の通り。
・2018年2月〜今年7月までの間、神奈川・平塚市内のクラブハウスや試合会場などで選手やチームスタッフらに、高圧的な態度や暴言を繰り返した疑いがある
・複数人の前でチーム関係者の能力を疑問視したように「どれだけ無能なんだ」「お前はウソつきだ」などと人格を否定するような発言を行った
・机をたたいたり、扇風機を蹴りながら選手に罵声を浴びせる行為
要はパワハラということになると思います。
これらの曹貴裁(チョウ・キジェ)監督の行為によって、精神的な苦痛や過度のプレッシャーから練習場に行けず、うつ病などを発症した関係者もいたということですから、日常的にパワハラがあったのでは?と考えられています。
当事者や目撃者も複数人いるとなると、例え曹貴裁(チョウ・キジェ)監督はそんなつもりはなかったのだとしても、側から見たら「パワハラ」に該当してしまう可能性はゼロではないでしょう。。。
ちなみに厚生労働省によるパワハラの定義は
・優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
・業務の適正な範囲を超えて行われること
・身体的もしくは精神的な苦痛を与えること
・就業環境を害すること
のような行為とされています。
まとめ
以上Jリーグのコンプライアンスとは何か?についてわかりやすく解説するとともに、過去の事例についてご紹介しました。
最近特に社会的・倫理的視点から見られる問題について取り沙汰されることが増えてきましたよね。
こういった問題も人ごとと言わず、自らの行動や考え方をコンプライアンスに沿って改めて見直したいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。